エリーゼのために [雑感]
今日のミューザ川崎でおこなわれた下野竜也さん&東京交響楽団によるジルベスター・コンサートは大変すばらしいものであった。今年は結果として苦悩に満ちたベートーヴェン・イヤーとなってしまったが、今日は満を持してそのオール・ベートーヴェン・プログラム。
ソリストもピアノ独奏に小川典子さん、ヴァイオリン独奏に南紫音さん、ナレーション&バリトンに宮本益光さんと個性豊かな饗宴を十分堪能させてもらった。
心から感謝したいと思います。
小川典子さんのピアノの実演体験は、確かに何回かはあるとは思うのだけれど、よく思い出せず、初体験のつもりで臨ませていただいた。
小川典子さんは、ミューザ川崎のコンサートホール・アドヴァイザーでもあり、それを大晦日のジルベスター・コンサートで、さらにミューザ川崎で聴けるなんて最高のシチュエーションだと思いました。
素晴らしかったです。
その小川さんが最初に弾いたベートーヴェンの「エリーゼのために」。
本当に小品中の小品という小さい作品だが、この曲は自分にとって子供心に非常に想い入れの深い曲で忘れたくても忘れられない曲である。
普通のプロのクラシック・コンサートでも滅多に演奏されることもないし、また普段、自分の部屋でオーディオで聴くような曲でもない。
だから今日コンサートでこの曲を聴いたとき、あまりの懐かしさに思わず涙した。
自分は小学生のとき、親からピアノを習わされていた。
母親のほうが熱心だった。
母親のほうが熱心だった。
自分はピアノを習っていることを同級生に知られるのが本当に恥ずかしくて恥ずかしくて堪らなかった。先生がよくクラスでノンノンさんはピアノを習っているんだよ、と言っちゃうのだが、それはやめてくれよ~という感じで嫌で嫌でたまらなかった。
女子生徒がピアノを習うのはごく自然だけれど、男子生徒でピアノを習うことはすごい恥ずかしいことと、当時の自分は思い込んでいたのだ。
男なら野球だろ!という時代だったので。(いまは違うでしょう。あくまで自分の世代のことです。)
オヤジは猛烈に怒ったけれど、母親はYAMAHAのアップライトのピアノを買ってくれた。オヤジもついに折れて、職場の高校の校長さんの奥さんがピアノの先生ということで(オヤジは高校教師だった)、その校長宅にレッスンに毎週1回通っていた。
自分はいやいややっていたので、あまり熱心な生徒ではなかった。
毎週新曲をさらっていかないといけないのだが、あまり熱心にさらっていかなかった。でもその奥さんの先生はやさしく、毎回やる気が出るようにアドバイスしてくれ勇気づけてくれた。
ピアノが2台並列に並んでいて、先生と自分。
バイエルン教本とかひと通りの教程はやったと思う。
発表会とかもあったな。
発表会とかもあったな。
もう憂鬱で、憂鬱で。
月一回、封筒に月謝を。母親に渡され、自分がじかに持って行っていた。
ピン札を入れるのが礼儀というかマナーです。(笑)
ピン札を入れるのが礼儀というかマナーです。(笑)
そんなピアノを習っていた子供時代、自分が一番猛烈に練習して、上手くなりたいと思って練習していたのが、ベートーヴェンの「エリーゼのために」だったのだ。
当時母親は、クラシックのレコードで、百科事典的なセットになっているものを買ってくれて、それにはベートーヴェン、モーツァルト、シューベルト、ショパンなど作曲家ごとに当時の45回転シングルLPがセットになっているものだった。それには各作曲家の有名なピアノ曲の大半が収められていた。
その中で自分はこのベートーヴェンの「エリーゼのために」に猛烈に夢中になってしまい、ピアノをいやいやながらやっていたにも関わらず、この曲だけは大好きになってしまい、自分で弾きたいと思い自発的に練習したのだ。
いまや全然覚えていないのだけれど、楽譜とかどうやって調達したのかな?
母親が買ってくれたんだろう。
母親が買ってくれたんだろう。
「なんと!美しい曲なんだろう!」
と子供心に感動していた。
あの有名な冒頭のフレーズ、主題が終わった後の第2の主題(?)に入るところのちょっとトリルな感じの箇所が自分のツボだった。ここは45回転のLPで聴くと、本当にコロコロ感満載でじつに綺麗にコロコロと速射砲で弾く。
あれに自分は堪らなく憧れて、プロはうまいな、あのように弾いてみたい、と本当に憧れた。その箇所だけ、もう何回も何回も練習しました。
でも45回転LPのように綺麗なコロコロ感なトリルな感じが出せないんだよね。
本当に子供心に相当悩みました。(笑)
本当に子供心に相当悩みました。(笑)
だから、自分にとって「エリーゼのために」というと、あの有名な冒頭のフレーズではなく、第2主題に入ったところのコロコロ感のあるあの箇所なんですよね。
「エリーゼのために」であの箇所を聴くと、自分は猛烈に反応します。(笑)
ピアノの先生にも、先生から教わる教本以外に、いま「エリーゼのために」に夢中になっているんです、と言って先生に披露したことがあった。
普段はやる気がない生徒だった自分からの思いがけない告白に先生も大層驚いてくれて、すごい褒められた。そして先生もこの曲を弾いてくれた。
そうしたら、あの箇所のあのコロコロ感、さすがであった。(笑)
45回転LPと同じだ!と思いました。
小学生時代にピアノを習っていた時代、自分がもっとも夢中になって、45回転LPのように上手に弾きたいと思って猛烈に練習した曲。。。それが「エリーゼのために」だったのである。
今日の小川典子さんの「エリーゼのために」を聴いたとき、普段は耳にすることのない曲なので、あまりに懐かしく思わず猛烈に反応してしまい、子供時代のあの風景が脳裏に走馬灯のように駆け巡りました。
もちろんあのコロコロ感の箇所も(笑)
いやいやながらやっていたピアノだったけれど、今思えば親にひたすら感謝の一言。子供時代に楽譜を読むという作業もやっていたおかげで、あれから何十年経過したいまでもなんとなくその感覚は覚えている。
スズキメソードではないけれど、やっぱり小さな子供の柔らかい脳のときに、こういうことは習得したほうがいいですね。それは別に音楽家ではない人生を歩んでいても、音楽に趣味として接していたとしても、大人になったいま役に立っていると感じます。
母親も自分がこの曲を家で弾いているとき、近所に聴かせたくて、そのときはいつも家の窓を全部オープンにしていたことを思い出します。(笑)
母親にはひたすら感謝です。
昨今の家庭事情により、母に対して尚更深い想いが。。。おお母よ!という感じです。