レイチェル・ポッジャーのディスコグラフィー 序章 [ディスク・レビュー]
自分が所有しているレイチェル・ポッジャーのディスク11枚を完遂した。自分はよくやるのだが、こうやって1人のアーティストのいままでの録音を全部確認することで、そのアーティストが目指しているところの音楽の方向性がわかるのだ。
だから自分にとって、はじめて接するアーティストを聴く場合、すぐにそのアーティストのディスコグラフィーを調べてみる。するとどういう音楽を目指してきているのか、まず理解できる。
まずは、そこを知ることが重要だし、ある意味そのアーティストへの礼儀というものではないか、と思う。
自分がいままで、こういうディスコグラフィーを聴き倒したのは、エディタ・グルベローヴァ、エレーヌ・グリモー、アリーナ・イブラギモヴァそしてこのレイチェル・ポッジャーの4人である。
結構、骨の要る作業なのだ。(笑)
簡単なことじゃない。
レイチェル・ポッジャーは、それこそ自分が所有している11枚以外にももっと出しているが、彼女を知るには、この11枚を持っていれば、彼女の音楽の方向性、そして録音を楽しむには十分ではないか、と思う。
2枚を新規に買い足したとはいえ、結構ポッジャー・フリークだったんだな、自分。(笑)
ポッジャーの11枚を一通り制覇して、まず思ったことは、Channel Classicsは、本当に録音がいいレーベルだな、と思ったこと。
そして本当に独特なサウンド。ちょっと他の高音質指向型レーベルでは例をみないというか、あまり体験できないサウンド。
「エネルギー感や鮮度感が抜群で、前へ前へ出てくるサウンド、そして空間もしっかり録れていて両立性があること。」
Channel Classicsの録音ポリシーって、こんな風にまとめれるんではないかなぁ、と感じてしまう。
結構各楽器にスポットマイクを多用してオンマイクでがっちり録って、メインで録ったものとうまくミキシングしているような感じがする。そのバランスが見事というか絶妙です。
ポッジャーの11枚を聴くと、新しい録音になっていくにつれて、どんどん録音がよくなっていくのがわかる。新しい録音は、正直、やりすぎ感というか、それはいじり過ぎだろう?(笑)という感もして、生演奏の音からはあまりに乖離している、でも「オーディオ快楽」といおうか、いかにもオーディオマニアが喜びそうな音に出来上がっている印象を抱いた。
一番違和感を感じるのは、あの楽器の音のエネルギー感や鮮度感。ある意味ここが、このレーベルのサウンドの1番の持ち味なのだが、生演奏では、あんなに派手に聴こえません。そこはオーディオライクにデフォルメして調理していることは間違いなし。
でもオーディオってそれでいいのかもしれない。
Channel Classicsは、ジャレッド・サックス氏が創立した会社で、彼のワンマン会社。(笑)
上の写真のように、Channel Classics創立25周年を記念して、「オレがこの25年間で録ったベスト25テイク」というCDを出している。(笑)
Channel Classicsの録音のクレジットを見てもサックス以外のメンバーはいっさい出てこない。
Recording enginner,editing
C.Jared Sacks
とあるだけ。
ライナーノーツに挿入されているレコーディング風景の写真を見てみると、ポッジャーを取り囲んで、エンジニアが数人と議論している写真をよく見るし、ひょっとしたら本当にサックス1人でやっているのかもしれないけれど、実際は、複数タッグでやっているはず。他のエンジニアも可哀想だから、ちゃんとクレジットしてやれよ~と思うのだが、このレーベルでは、こと録音という神聖エリアではこのレーベルでは、サックスは圧倒的な絶対専制君主なのだろう。
ここが、PENTATONEやBIS内での録音エンジニアの立ち位置関係の明らかな違い、と感じるところだ。
大昔に、サックスのインタビューで、彼の録音ポリシーと録音技術についてのインタビューの記事を読んだことがあったのだが、内容は忘れてしまったが、かなり骨のあるしっかりした考えを持っている人なんだな、と思ったことがある。
Channel Classicsのマスタリングルームは、B&W 803D×5本(Nautilusの後に出たやつで、Diamondの前にでたSPです。)、そしてCLASSE 5200のアンプを使っている。
レイチェル・ポッジャーの録音、彼女の音楽の方向性は、やはりバロック時代の音楽。ことバッハが彼女の音楽の根底にあるのが、はっきりわかる。やはりこの世界にデビューしたのはバッハだし、いまのバロック古楽の世界で名声を得たのもバッハ作品がきっかけだった。
彼女にとって、バッハは特別な存在。
そして最近の最新アルバムでは、ヴィヴァルディを自分のテーマにあげていて、4枚のヴィヴァルディ・アルバムをリリースしている。
彼女のヴィヴァルディへの傾倒ぶりが分かる。
11枚の録音を作曲家別に分けてみると、バッハ(×4枚)。ヴィヴァルディ(×4枚)、モーツァルト、ハイドン、ビーバーとなる。
演奏スタイルの変遷としては、ポッジャー自身がバロック・ヴァイオリンを売りにしている奏者、その部分は不動として、無伴奏で演奏しているアルバム、そして彼女の最も大切なパートナーである古楽演奏の室内楽ユニット、ブレコン・バロック。そしてオランダ古楽界の若き精鋭集団オランダ・バロック協会や、ポーランドの古楽グループ「アルテ・デイ・スオナトーリ」など自分のグループ以外との共演にもとても積極的だ。
特に最近の彼女のライフワークであるヴィヴァルディ・プロジェクト。
ポーランドの古楽グループ「アルテ・デイ・スオナトーリ」と共演した「ラ・ストラヴァガンツァ」、オランダのグループ「オランダ・バロック協会」と共演した「ラ・チェトラ」、 そして自ら結成した古楽グループ「ブレコン・バロック」と共演した「調和の霊感」
この3枚のヴィヴァルディ・アルバムは絶対買いの素晴らしいアルバム、録音だった。
ヴィヴァルディのバロック時代に「協奏曲」というジャンルは確立されていなかったと理解しているが、まさに古楽時代のヴァイオリン協奏曲と言ってもいい名高い名曲を収めた3枚となった。
特にポーランドの古楽グループ「アルテ・デイ・スオナトーリ」と共演した「ラ・ストラヴァガンツァ」の録音は、2002年にリリースされたアルバムだが、これがChannel Classicsとしては初の協奏曲録音となったそうで、ポッジャーのこのレーベルへの貢献ぶりがわかる。
彼女の室内楽ユニット、ブレコン・バロック。
2007年にブレコン・バロック・インストゥルメンタル・アンサンブルを設立し、2010年に録音したデビューCD、バッハのヴァイオリン協奏曲は、ユニバーサル批評家の称賛を集めた。
ブレコン・バロックはチェンバロを含めて6名、各パート1人で編成し、バッハ時代のカフェ・ツィンマーマン・アンサンブルを模し、自由で新しいスタイルの演奏を目指している。
このブレコン バロックが主役として活躍するブレコン・バロック音楽フェスティバルも定期的に開催されていて、ポッジャーはその芸術監督に2006年に就任している。
まさにポッジャーの手兵といっていい存在で、今回の11枚の中でも5枚が、このブレコン・バロックとの競演なのだ。彼女にとって、なくてはならない存在だ。
もうひとつ今回気づいたことは、11枚のうち録音ロケーションの大半がイギリス、ロンドンで行われていることだ。何枚かは、お膝元のオランダでおこなわれている。
こうしてみると、ポッジャーって英国の父とドイツ人の母の間に生まれたイギリス国籍。
今住んでいるところ、活動の本拠地も、イギリス、ロンドンなのかなー?と思ってしまう。
これから本章のディスク紹介に入っていきたい。本当にとてもウィットに富んだ魅力的な11枚のアルバムだった。自分がこれだけバロック音楽の世界を集中的に聴くことも普段はあまりなく、ある意味貴重な体験だった。
長くなりそうなので、いったん日記を2部に分けようと思います。
だから自分にとって、はじめて接するアーティストを聴く場合、すぐにそのアーティストのディスコグラフィーを調べてみる。するとどういう音楽を目指してきているのか、まず理解できる。
まずは、そこを知ることが重要だし、ある意味そのアーティストへの礼儀というものではないか、と思う。
自分がいままで、こういうディスコグラフィーを聴き倒したのは、エディタ・グルベローヴァ、エレーヌ・グリモー、アリーナ・イブラギモヴァそしてこのレイチェル・ポッジャーの4人である。
結構、骨の要る作業なのだ。(笑)
簡単なことじゃない。
レイチェル・ポッジャーは、それこそ自分が所有している11枚以外にももっと出しているが、彼女を知るには、この11枚を持っていれば、彼女の音楽の方向性、そして録音を楽しむには十分ではないか、と思う。
2枚を新規に買い足したとはいえ、結構ポッジャー・フリークだったんだな、自分。(笑)
ポッジャーの11枚を一通り制覇して、まず思ったことは、Channel Classicsは、本当に録音がいいレーベルだな、と思ったこと。
そして本当に独特なサウンド。ちょっと他の高音質指向型レーベルでは例をみないというか、あまり体験できないサウンド。
「エネルギー感や鮮度感が抜群で、前へ前へ出てくるサウンド、そして空間もしっかり録れていて両立性があること。」
Channel Classicsの録音ポリシーって、こんな風にまとめれるんではないかなぁ、と感じてしまう。
結構各楽器にスポットマイクを多用してオンマイクでがっちり録って、メインで録ったものとうまくミキシングしているような感じがする。そのバランスが見事というか絶妙です。
ポッジャーの11枚を聴くと、新しい録音になっていくにつれて、どんどん録音がよくなっていくのがわかる。新しい録音は、正直、やりすぎ感というか、それはいじり過ぎだろう?(笑)という感もして、生演奏の音からはあまりに乖離している、でも「オーディオ快楽」といおうか、いかにもオーディオマニアが喜びそうな音に出来上がっている印象を抱いた。
一番違和感を感じるのは、あの楽器の音のエネルギー感や鮮度感。ある意味ここが、このレーベルのサウンドの1番の持ち味なのだが、生演奏では、あんなに派手に聴こえません。そこはオーディオライクにデフォルメして調理していることは間違いなし。
でもオーディオってそれでいいのかもしれない。
Channel Classicsは、ジャレッド・サックス氏が創立した会社で、彼のワンマン会社。(笑)
上の写真のように、Channel Classics創立25周年を記念して、「オレがこの25年間で録ったベスト25テイク」というCDを出している。(笑)
Channel Classicsの録音のクレジットを見てもサックス以外のメンバーはいっさい出てこない。
Recording enginner,editing
C.Jared Sacks
とあるだけ。
ライナーノーツに挿入されているレコーディング風景の写真を見てみると、ポッジャーを取り囲んで、エンジニアが数人と議論している写真をよく見るし、ひょっとしたら本当にサックス1人でやっているのかもしれないけれど、実際は、複数タッグでやっているはず。他のエンジニアも可哀想だから、ちゃんとクレジットしてやれよ~と思うのだが、このレーベルでは、こと録音という神聖エリアではこのレーベルでは、サックスは圧倒的な絶対専制君主なのだろう。
ここが、PENTATONEやBIS内での録音エンジニアの立ち位置関係の明らかな違い、と感じるところだ。
大昔に、サックスのインタビューで、彼の録音ポリシーと録音技術についてのインタビューの記事を読んだことがあったのだが、内容は忘れてしまったが、かなり骨のあるしっかりした考えを持っている人なんだな、と思ったことがある。
Channel Classicsのマスタリングルームは、B&W 803D×5本(Nautilusの後に出たやつで、Diamondの前にでたSPです。)、そしてCLASSE 5200のアンプを使っている。
レイチェル・ポッジャーの録音、彼女の音楽の方向性は、やはりバロック時代の音楽。ことバッハが彼女の音楽の根底にあるのが、はっきりわかる。やはりこの世界にデビューしたのはバッハだし、いまのバロック古楽の世界で名声を得たのもバッハ作品がきっかけだった。
彼女にとって、バッハは特別な存在。
そして最近の最新アルバムでは、ヴィヴァルディを自分のテーマにあげていて、4枚のヴィヴァルディ・アルバムをリリースしている。
彼女のヴィヴァルディへの傾倒ぶりが分かる。
11枚の録音を作曲家別に分けてみると、バッハ(×4枚)。ヴィヴァルディ(×4枚)、モーツァルト、ハイドン、ビーバーとなる。
演奏スタイルの変遷としては、ポッジャー自身がバロック・ヴァイオリンを売りにしている奏者、その部分は不動として、無伴奏で演奏しているアルバム、そして彼女の最も大切なパートナーである古楽演奏の室内楽ユニット、ブレコン・バロック。そしてオランダ古楽界の若き精鋭集団オランダ・バロック協会や、ポーランドの古楽グループ「アルテ・デイ・スオナトーリ」など自分のグループ以外との共演にもとても積極的だ。
特に最近の彼女のライフワークであるヴィヴァルディ・プロジェクト。
ポーランドの古楽グループ「アルテ・デイ・スオナトーリ」と共演した「ラ・ストラヴァガンツァ」、オランダのグループ「オランダ・バロック協会」と共演した「ラ・チェトラ」、 そして自ら結成した古楽グループ「ブレコン・バロック」と共演した「調和の霊感」
この3枚のヴィヴァルディ・アルバムは絶対買いの素晴らしいアルバム、録音だった。
ヴィヴァルディのバロック時代に「協奏曲」というジャンルは確立されていなかったと理解しているが、まさに古楽時代のヴァイオリン協奏曲と言ってもいい名高い名曲を収めた3枚となった。
特にポーランドの古楽グループ「アルテ・デイ・スオナトーリ」と共演した「ラ・ストラヴァガンツァ」の録音は、2002年にリリースされたアルバムだが、これがChannel Classicsとしては初の協奏曲録音となったそうで、ポッジャーのこのレーベルへの貢献ぶりがわかる。
彼女の室内楽ユニット、ブレコン・バロック。
2007年にブレコン・バロック・インストゥルメンタル・アンサンブルを設立し、2010年に録音したデビューCD、バッハのヴァイオリン協奏曲は、ユニバーサル批評家の称賛を集めた。
ブレコン・バロックはチェンバロを含めて6名、各パート1人で編成し、バッハ時代のカフェ・ツィンマーマン・アンサンブルを模し、自由で新しいスタイルの演奏を目指している。
このブレコン バロックが主役として活躍するブレコン・バロック音楽フェスティバルも定期的に開催されていて、ポッジャーはその芸術監督に2006年に就任している。
まさにポッジャーの手兵といっていい存在で、今回の11枚の中でも5枚が、このブレコン・バロックとの競演なのだ。彼女にとって、なくてはならない存在だ。
もうひとつ今回気づいたことは、11枚のうち録音ロケーションの大半がイギリス、ロンドンで行われていることだ。何枚かは、お膝元のオランダでおこなわれている。
こうしてみると、ポッジャーって英国の父とドイツ人の母の間に生まれたイギリス国籍。
今住んでいるところ、活動の本拠地も、イギリス、ロンドンなのかなー?と思ってしまう。
これから本章のディスク紹介に入っていきたい。本当にとてもウィットに富んだ魅力的な11枚のアルバムだった。自分がこれだけバロック音楽の世界を集中的に聴くことも普段はあまりなく、ある意味貴重な体験だった。
長くなりそうなので、いったん日記を2部に分けようと思います。