ジャレット・サックスの強烈なインタビュー 技術編 [オーディオ]
Channel ClassicsのSACDやDSDファイルについているジャケットを見てもらえばわかると思うが、本当にこのレーベル独特のセンスのあるカラフルさで、自分はこのレーベルは、本当にジャケットにセンスがあると思っている。サウンドと同様にとても個性ある。
これも全部サックスがカメラマンなのだ。
しかもアーティストをどう構図の中にポーズをとらせて、収めるか、周りの装飾、デザイン含め、すごいセンスある。
ちなみにブックレットの中に挿入されている録音セッションのときの写真とかも、全部サックス。
クレジットにphoto by Jared Sacksと書いてある。
彼は、カメラのほうもかなり好きみたいだ。
そしてやはり1番驚くのは、Channel Classicsのアルバムの楽曲の良さ、音楽性の多様さ。所属しているアーティストも本当に魅力的だけれど、自分のレーベルに契約をしてもらうスカウト行為、そして、そのアーティスト達とどのような曲をテーマにして、レコーディングをやっていくか、を決めていく作業。
これ全部サックスが1人でやっているんだと思うんだよね。
とにかくディレクター兼プロデューサーなのだ。
全部自分が決めている。そして自分が動いている。
録音だけじゃないのだ。
こうしてみると、朝令暮改みたいだけど、やっぱりChannel Classicsは、ジャレット・サックスによるワンマンな会社と言っていいのではないか?
それは別に他人に任せられない、とかいう悪意的な意味ではなくて、本当に作品をプロデュースして作っていくこと自体が大好きで大好きで堪らないだけで、全部自分がやりたい、そういう純粋な気持ちからなんだと思う。
そしてスタジオも自宅。
HMVでもAmazonでもタワレコでのオンラインショップでもどれでもいい。Channel Classicsのラインナップを見てほしい。あれだけ、いろんなジャンルで、たくさんのクオリティの高いアルバムの数々・・・それが全部サックス中心に少数精鋭メンバーで作られたもの、という事実に驚愕するしかないだろう。
Channel Classicsというレーベルは、その華々しい作品群からは予想すらできない、じつはその実態はとても手作り感満載のレーベルだった、と言えるのかもしれない。
いよいよインタビューの後編、ぐっと技術的に掘り下げた内容になります。
記者:
あなたは、Andress Koch氏のDSD over PCMでの再生の技術は成功すると思いますか?
サックス氏:
彼は、かなりテクニカル・サイドのほうに行ってるよね。私にとっては、DSDの優位性というのは、感情の起伏、深さ、そしていかにSPから音離れさせられるか?というところにあると思っています。それはもはやブロック形状の感覚ではないんですよね。
あなたが、PCMの音を聴くとき、SPからは文字通り、ブロック形状の音が聴こえるような感覚を持つと思います。そういう感覚は、DSDでは絶対起こらないのです。
DSDの音は空気のような存在のサウンド。その空気のような存在の音について語り合いましょう。
私にとって、もし、あなたがワイン・テイスティングをやるならわかってもらえるでしょうけど、録音はワイン・テイスティングのようなものでないといけないと思っているのです。なぜなら、他の人があなたが言っているところの意味を理解できないといけないからです。
あなたがサウンドを造る、そしてミュージシャンがやってきて、それを聴く。そして彼らが、それをどのように聴こえたのかを説明できないといけない。
私達はお互いを理解しないといけないですし、形容詞を使って、そのサウンドを表現しないといけない。なぜなら、彼らがヴァイオリンのEの弦をどのように聴こえたのかを彼らが説明していることを、理解するために、いちいち本を広げてられないからです。
私はすぐにその箇所に戻って、物理的に彼らが感じたレベルの正しさになるように、いろいろ調整しないといけないのです。そこには本類はいっさい必要ない。経験上からくるカット&トライの世界なのです。
特に我々のオーディオの世界では、他人が理解できるように、SPやAMPから放たれるサウンドが、どのように表現できるか、というその表現の言葉を探し出すことが大切な仕事なのです。
PCMとDSDのサウンドの違いを表現することは、さほど難しいことではありません。
記者:
あなたが、DSDは感情の起伏を運んでくる、そういうところに優位性があると語るとき、それは人々がDSDの音を聴くとき、それはより音楽を聴いているような感覚に近くなる、ということを意味している、と理解していいですか?
サックス:
まさにその通り!もちろん、人はそれぞれどのように聴こえるかは違って当然。コンサートで、まずあなたは、オーケストラの概観をヴィジュアルで感じることになるでしょう。
でも、もし実際そのサウンドを聴く段階になると、ここのコンサートホールの音響はいいかどうか、まず確認するはずです。
なぜ、あなたはそのとき鳥肌が立つくらい感動するのか?それはホールの直接音だけでなく、側方や後方からの反射音を聴いているからなのです。そして、我々は、それらの直接音、反射音の関係を、マルチチャンネルのフォーマットで、そのままキャプチャーしようとするわけです。
しかし、2chステレオのリスナーとして聴く場合、もう少し工夫してやる必要があるのです。
DSDは、とくにそのダイナミックレンジという観点から、それが可能になるのです。
高域では、音は空気のような感じの繊細さになると言うことができます。音楽は、まさにこの空気のような感覚が必要なのです。DSDを使うと、特に録音機材がどこにあるかという意識を分散させてくれるメリットがあると思うのです。DSDは優れています。
もし、私が録音したブタペスト祝祭管のマーラー1番「巨人」を聴くとき、そのサウンドの明瞭さ、そしてその深さの表現において、特に成功した録音だな、と感じます。
これが、まさに音を表現するための形容詞なのです。
しかし、結局のところ、やはり感情の起伏の表現、そこに行き着いちゃうのです。私にとって、そういう表現を実現してくれるフォーマットは、DSD以外にありません。
記者:
native DSDで録音しているのは、実際どのようなところがやってますか?
サックス:
スターターとして最初に取り組んでいるのは、PENTATONE、ハルモニア・ムンディ、BSO、そしてAlia Voxかな?
BISやLINNはやっていない。コンセルトヘボウでさえやっていない。なぜなら彼らは、いまのラジオ放送局の設備を使わないといけないから。
Challenge Classics(彼らは、私がずっと昔に教えていた生徒です。)の数枚のディスクは、native DSDだね。おそらくドイツの中の15の小さなレーベルがnative DSDを採用している。日本のExton(Octaviaレコード)もそうです。
録音機材のフロント部分はいくつかの新しい機材となる。マイクプリアンプやA/D-D/Aコンバーター(Horusと呼ばれているMerging Technologiesのもの)は、扱いやすくなったね。すべてが1Box-typeに収納できるようになっているので。
まぁ、値段が高価ではあるけれど、昔に比べたら、それでもずいぶん安くなったもんです。そこが大きな違いかな?
私はサンプリング周波数 64Fs(2.82MHz)で録音している。特に最近は、さらに128Fs(5.6MHz)や256Fs(11.2MHz)でも録音できるようになった。オーディオファイル(オーディオマニア)は、サンプリング周波数が2倍になれば、それだけよくなると感じるかもしれない。
たとえば64Fsで録音することを考えましょう。そこから128Fsになると、周波数スペクトラム的にもノイズレベルがオクターブが急になって、さらに高域に追いやられて(ノイズシェーピング)扱いやすくなる。
でもそんな技術的なことは自分にとっては、あまり重要ではない。まずリスニング試聴テストをやらないといけない。
我々のビジネスでは、ポストプロダクションをやらないといけません。
しかし常時やるわけではありません。私はいつもステレオ2chにミックスダウンしないといけない。サラウンド音声のチャンネルは、ダイレクトにA/Dコンバーターを通るが、そのままミキサーを通過するわけではない。
その部分のデータを取り出して、ポストプロダクションを通さないマスターを造ることにしている。(言い換えれば、シグマデルタ変調のコンバーターを通す前)
ミキサーを通す前に、いくつかのEQをかけて、ある程度の音に装飾をつけないといけない。もちろんハイレベルのDSDになってくると、DXDのフォーマットにして、ポストプロダクションをやる、という方法もある。
現在、これが真のやり方というのが統一されている訳ではない。それは将来的に解決されるでしょう。
でもこれだけは確実なことは、この処理をするために、他の外部録音製作会社に委託するというソリューションはない、ということです。(笑)
もし、あなたがいわゆるRAWデータを聴いたとき、それをポストプロダクションした音と比較したとき、機材の周りの空気感や深さの表現に違いを感じることでしょう。それはグラデーションする前のプロセスのサウンドで、軽い程度だけど確かにその違いは存在します。残念ながら、それについて対応する策はありません。
192PCMとDSDの音の違いを、あなたは尋ねたいかもしれない。
その違いを聴こえるようになるには、まずあなたは、本当によいオーディオ機器を持っていないといけない。もちろん曲のレパートリーに依存することもある。私は特にダイナミックレンジという観点から、その比較をする。
もし192PCMのダウンサンプリングするなら、絶対に、その音はPCMの音として聴こえます。
私のGrimmのコンバーターは、とてもよい。私の特別の自家製のミキシング・ボードでつなげるんですが。そして私が最近の2年間で使っているバッテリー駆動のマイクのプリアンプ、そしてvan del Hul T-3 cable、これらを使うとサウンドは信じられないくらい素晴らしいよ。
私のマーラー1番の録音をしっかりと聴いてみてほしい。サウンドはとてもオープン、大音量の音の部分でさえもその空気感が抜群です。感情の起伏、そして深さの表現は、あなたを包んで堪らない気持ちになるでしょう。
私は、ライブイヴェントにはなるべく接するようにしたほうがいいと思っている。そして録音のレビューもきちんと気にしたほうがいい。
私は、このライブと録音のレビューの2つのコンビネーションを参考にしながら、録音をやり続けています。
記者:
DSDの欠点は、編集できないこと。そこで、DSDの次なる改良プロセスとしては、DXDで編集できるようになることでしょうか?
サックス:
その通り。私がマーラー1番のRAWデータを君に送ることができたとしたら、その違いがわからなくなるでしょう。人々は私にオリジナル・マスターを要求してくることになる。
2012年でエキサイティングだったこと。私がネットコンテンツのDSDファイルを提供し始めたとき、DSD DACを提供できたメーカーは2社しかなかった。それがいまや60社を超える勢いなのです。
いま私はマルチチャンネルのDACを提供できるように働きかけている。Mytek, Oppo, and ExaSoundなんかがリーディング・カンパニー。我々の方向性は、マルチチャンネルの方向に向いていることは間違いないことです。
将来、私は、普通のCDを造ることに戻りたいと思っている。
私が、いま直面している問題点は、ハイブリッドのSACDを造るとき、それをノーマルのCDの値段で売ろうとしたときに、そのマージン利益が限りなく小さいものとなってしまうことなのです。それに比べて、ダウンロードコンテンツでは、2chステレオとマルチチャンネルのファイルをまったくその同じ値段で造れてしまいます。
アメリカの問題は、実際のところ、ディーラーであるところのレーベル。ここ数年、彼らはSACDを扱いたいと思っていないし、またそのための普及の教育をしたいと思っていないところに問題があると思っています。これはこれからもずっと抱える問題でしょう。
だから、私はリスナーを教育するための雑誌とWEBサイトを必要としています。
記者:
あなたの録音の中で、ポストプロダクションを通さないRAWデータが含まれることはありますか?
サックス:
あります。かなりの部分ある。最初の頃の録音、Ragazze String Quartet (Haydn, Schubert,Widmann)新しい録音では、レイチェル・ポッジャーの守護天使。とか。。。
記者:
聴くときの再生システムは、どのようなものをお使いですか?
サックス:
15年前、私はとてもアベレージだけど、とてもリニア特性に優れたオランダのオーディオメーカーの2Way SPを録音のために購入した。
私はスタッフを持たないといけなかったし、いつもリスニングルームでは、教会のような信じられないような響きをもったアコースティックな音響のサウンドを聴かないといけないので、とてもベーシックなモニターに適したシステムのほうがいいと思うようになりました。
私は、10台のSPを購入。うち5台はうちのスタジオに、そして残り5台を出張先のロケーション用とした。
私の他のスタジオでは、マルチチャンネル用のB&W 803Dを5本にクラッセの5つのアンプが内蔵されたパワーアンプ、そしてカスタムメイドのプリアンプ、そして van den Hul のケーブルを使っている。
大体、出張先のロケーションのところで、ほとんどすべての編集は終わってしまいます。
ステレオで編集するとき。そしてマスターを造る瞬間のマルチチャンネルで聴くときのみ。
大体、普通の一般ユーザーは、95%の人がステレオ2chで聴いていると思うので、自分にはそれがベスト。加えて、マルチチャンネルのプロセスはとてもシンプルだからね。
ときどき、ステレオ2chのために、私はサラウンド音声のアンビエンスをちょっとだけ加えることがある。そのようにしないと、2chではコンサートホールの空間が表現できないから。
ミックスダウンを終わった後、私は台所や私のオフィスや息子のラジカセのところに持っていきます。
特にボーカルの部分、Barbara Hannigan が歌うBritten's Les Illuminations。
私は、いわゆるハイフェッツ・エフェクトのようなヴァイオリンの響き効果、また別の場所でのピアノやオーケストラの響きの部分を造って足しこむようなことをする人間ではありません。
というのは、声というのは楽器の一部。特にディクション(発音)は明快に理解できるように聴き取れないといけない。だから、ここに特別の注意を払う。だから違う部屋に行って、その声を邪魔しないように、十分周りが低いレベルかどうか聴いてみるです。
私は、2chステレオミックスは、出張先ロケーションでも十分納得できるまで造りこむ。
しかし、もし必要ならばソロトラックや他のトラックをあとで追加することもある。
だから私のステレオミックスでは、私は常に加えている作業のみ。取り除くことは絶対しない。
でもときどき、出張先で、話し声さえ聴こえずらい悪いロケーションに遭遇するときもある。
そのようなときは、ソロトラックは別のトラックに格納して、後で処理する。
しかし、native DSDマスターのときは、編集できないので、DXDにて、ポストプロダクションによって処理する場合もある。
記者:
一般大衆が、DSD DACを購入して、あなたの192PCMファイルを持っていたとしたら、DSDファイルとは違う対価になるべきだと考えますか?
サックス:
はい。異なった解像度には、異なった対価を払うべきです。
120年の長いオーディオの歴史の中で、最初の時代、シンプルなダウンロードでどれも全く同じ解像度クオリティのファイルしか存在しない、という信じられない時代がありました。オランダの問題は、21%のtax。我々はダウンロードのために25ユーロ払わないといけない。我々は、クーポン・コードシステムを作って、購入ごとにポイントが溜まり、その25%のtaxを減算していくような工夫をしています。
我々は、音楽配信サービスのNative DSD Music.comをスタートさせました。
DSDでの音源の2chとマルチチャンネルのファイルを供給する音楽配信サイトです。
すべてのレーベルが、そのサイトには、自分のページ領域が割り当てられていて、録音をプロモートできます。
ファイル形式は、DSFファイル。メタデータは、JRiverとコンパティブルなソフトウエア上では、ファイルにタグづけされます。
我々は、64Fs DSDだけでなく、さらに128Fs DSD、256Fs DSDも対応させていくつもりです。
DXDファイル形式も、録音時にいっしょに付加されます。
1ヶ月単位でたくさんのレーベルの録音がどんどん追加されますので、ぜひご期待ください!
DSDは空気のような存在で、音楽の再生はまさにそうあるべきだ、というのがサックスの主張。
世間一般的には、PCMはロックやポップスのようなメリハリの効いたアタック感のある曲に向いていて、DSDは、繊細で柔らかい質感で空間を感じやすいような特徴があって、クラシックに向いている、というような通説がある。
サックスはその繊細な信号レベルを表現できるところが気に入っているようだ。
あと、最近、アーティストの新譜をSACDでは造らなくなって、物理メディアはCDで出して、あとはネットコンテンツ(DSDファイル)でavailableというビジネスのやり方も、結局コストの問題だったんですね。
サックス自身がノーマルなCDの原点に帰還したい、という考えを持っていたのは驚きました。
すべて伏線があったということです。
このインタビューで、Channel Classicsのすべてが理解できたと思う。
公式HPなんかより、その核心をついた内容だと思う。
これで、最後の砦であった、このレーベルの日記をかけてホッと安堵です。
もう思い残すことない。(あれ?CHANDOSは・・・?(笑))
これも全部サックスがカメラマンなのだ。
しかもアーティストをどう構図の中にポーズをとらせて、収めるか、周りの装飾、デザイン含め、すごいセンスある。
ちなみにブックレットの中に挿入されている録音セッションのときの写真とかも、全部サックス。
クレジットにphoto by Jared Sacksと書いてある。
彼は、カメラのほうもかなり好きみたいだ。
そしてやはり1番驚くのは、Channel Classicsのアルバムの楽曲の良さ、音楽性の多様さ。所属しているアーティストも本当に魅力的だけれど、自分のレーベルに契約をしてもらうスカウト行為、そして、そのアーティスト達とどのような曲をテーマにして、レコーディングをやっていくか、を決めていく作業。
これ全部サックスが1人でやっているんだと思うんだよね。
とにかくディレクター兼プロデューサーなのだ。
全部自分が決めている。そして自分が動いている。
録音だけじゃないのだ。
こうしてみると、朝令暮改みたいだけど、やっぱりChannel Classicsは、ジャレット・サックスによるワンマンな会社と言っていいのではないか?
それは別に他人に任せられない、とかいう悪意的な意味ではなくて、本当に作品をプロデュースして作っていくこと自体が大好きで大好きで堪らないだけで、全部自分がやりたい、そういう純粋な気持ちからなんだと思う。
そしてスタジオも自宅。
HMVでもAmazonでもタワレコでのオンラインショップでもどれでもいい。Channel Classicsのラインナップを見てほしい。あれだけ、いろんなジャンルで、たくさんのクオリティの高いアルバムの数々・・・それが全部サックス中心に少数精鋭メンバーで作られたもの、という事実に驚愕するしかないだろう。
Channel Classicsというレーベルは、その華々しい作品群からは予想すらできない、じつはその実態はとても手作り感満載のレーベルだった、と言えるのかもしれない。
いよいよインタビューの後編、ぐっと技術的に掘り下げた内容になります。
記者:
あなたは、Andress Koch氏のDSD over PCMでの再生の技術は成功すると思いますか?
サックス氏:
彼は、かなりテクニカル・サイドのほうに行ってるよね。私にとっては、DSDの優位性というのは、感情の起伏、深さ、そしていかにSPから音離れさせられるか?というところにあると思っています。それはもはやブロック形状の感覚ではないんですよね。
あなたが、PCMの音を聴くとき、SPからは文字通り、ブロック形状の音が聴こえるような感覚を持つと思います。そういう感覚は、DSDでは絶対起こらないのです。
DSDの音は空気のような存在のサウンド。その空気のような存在の音について語り合いましょう。
私にとって、もし、あなたがワイン・テイスティングをやるならわかってもらえるでしょうけど、録音はワイン・テイスティングのようなものでないといけないと思っているのです。なぜなら、他の人があなたが言っているところの意味を理解できないといけないからです。
あなたがサウンドを造る、そしてミュージシャンがやってきて、それを聴く。そして彼らが、それをどのように聴こえたのかを説明できないといけない。
私達はお互いを理解しないといけないですし、形容詞を使って、そのサウンドを表現しないといけない。なぜなら、彼らがヴァイオリンのEの弦をどのように聴こえたのかを彼らが説明していることを、理解するために、いちいち本を広げてられないからです。
私はすぐにその箇所に戻って、物理的に彼らが感じたレベルの正しさになるように、いろいろ調整しないといけないのです。そこには本類はいっさい必要ない。経験上からくるカット&トライの世界なのです。
特に我々のオーディオの世界では、他人が理解できるように、SPやAMPから放たれるサウンドが、どのように表現できるか、というその表現の言葉を探し出すことが大切な仕事なのです。
PCMとDSDのサウンドの違いを表現することは、さほど難しいことではありません。
記者:
あなたが、DSDは感情の起伏を運んでくる、そういうところに優位性があると語るとき、それは人々がDSDの音を聴くとき、それはより音楽を聴いているような感覚に近くなる、ということを意味している、と理解していいですか?
サックス:
まさにその通り!もちろん、人はそれぞれどのように聴こえるかは違って当然。コンサートで、まずあなたは、オーケストラの概観をヴィジュアルで感じることになるでしょう。
でも、もし実際そのサウンドを聴く段階になると、ここのコンサートホールの音響はいいかどうか、まず確認するはずです。
なぜ、あなたはそのとき鳥肌が立つくらい感動するのか?それはホールの直接音だけでなく、側方や後方からの反射音を聴いているからなのです。そして、我々は、それらの直接音、反射音の関係を、マルチチャンネルのフォーマットで、そのままキャプチャーしようとするわけです。
しかし、2chステレオのリスナーとして聴く場合、もう少し工夫してやる必要があるのです。
DSDは、とくにそのダイナミックレンジという観点から、それが可能になるのです。
高域では、音は空気のような感じの繊細さになると言うことができます。音楽は、まさにこの空気のような感覚が必要なのです。DSDを使うと、特に録音機材がどこにあるかという意識を分散させてくれるメリットがあると思うのです。DSDは優れています。
もし、私が録音したブタペスト祝祭管のマーラー1番「巨人」を聴くとき、そのサウンドの明瞭さ、そしてその深さの表現において、特に成功した録音だな、と感じます。
これが、まさに音を表現するための形容詞なのです。
しかし、結局のところ、やはり感情の起伏の表現、そこに行き着いちゃうのです。私にとって、そういう表現を実現してくれるフォーマットは、DSD以外にありません。
記者:
native DSDで録音しているのは、実際どのようなところがやってますか?
サックス:
スターターとして最初に取り組んでいるのは、PENTATONE、ハルモニア・ムンディ、BSO、そしてAlia Voxかな?
BISやLINNはやっていない。コンセルトヘボウでさえやっていない。なぜなら彼らは、いまのラジオ放送局の設備を使わないといけないから。
Challenge Classics(彼らは、私がずっと昔に教えていた生徒です。)の数枚のディスクは、native DSDだね。おそらくドイツの中の15の小さなレーベルがnative DSDを採用している。日本のExton(Octaviaレコード)もそうです。
録音機材のフロント部分はいくつかの新しい機材となる。マイクプリアンプやA/D-D/Aコンバーター(Horusと呼ばれているMerging Technologiesのもの)は、扱いやすくなったね。すべてが1Box-typeに収納できるようになっているので。
まぁ、値段が高価ではあるけれど、昔に比べたら、それでもずいぶん安くなったもんです。そこが大きな違いかな?
私はサンプリング周波数 64Fs(2.82MHz)で録音している。特に最近は、さらに128Fs(5.6MHz)や256Fs(11.2MHz)でも録音できるようになった。オーディオファイル(オーディオマニア)は、サンプリング周波数が2倍になれば、それだけよくなると感じるかもしれない。
たとえば64Fsで録音することを考えましょう。そこから128Fsになると、周波数スペクトラム的にもノイズレベルがオクターブが急になって、さらに高域に追いやられて(ノイズシェーピング)扱いやすくなる。
でもそんな技術的なことは自分にとっては、あまり重要ではない。まずリスニング試聴テストをやらないといけない。
我々のビジネスでは、ポストプロダクションをやらないといけません。
しかし常時やるわけではありません。私はいつもステレオ2chにミックスダウンしないといけない。サラウンド音声のチャンネルは、ダイレクトにA/Dコンバーターを通るが、そのままミキサーを通過するわけではない。
その部分のデータを取り出して、ポストプロダクションを通さないマスターを造ることにしている。(言い換えれば、シグマデルタ変調のコンバーターを通す前)
ミキサーを通す前に、いくつかのEQをかけて、ある程度の音に装飾をつけないといけない。もちろんハイレベルのDSDになってくると、DXDのフォーマットにして、ポストプロダクションをやる、という方法もある。
現在、これが真のやり方というのが統一されている訳ではない。それは将来的に解決されるでしょう。
でもこれだけは確実なことは、この処理をするために、他の外部録音製作会社に委託するというソリューションはない、ということです。(笑)
もし、あなたがいわゆるRAWデータを聴いたとき、それをポストプロダクションした音と比較したとき、機材の周りの空気感や深さの表現に違いを感じることでしょう。それはグラデーションする前のプロセスのサウンドで、軽い程度だけど確かにその違いは存在します。残念ながら、それについて対応する策はありません。
192PCMとDSDの音の違いを、あなたは尋ねたいかもしれない。
その違いを聴こえるようになるには、まずあなたは、本当によいオーディオ機器を持っていないといけない。もちろん曲のレパートリーに依存することもある。私は特にダイナミックレンジという観点から、その比較をする。
もし192PCMのダウンサンプリングするなら、絶対に、その音はPCMの音として聴こえます。
私のGrimmのコンバーターは、とてもよい。私の特別の自家製のミキシング・ボードでつなげるんですが。そして私が最近の2年間で使っているバッテリー駆動のマイクのプリアンプ、そしてvan del Hul T-3 cable、これらを使うとサウンドは信じられないくらい素晴らしいよ。
私のマーラー1番の録音をしっかりと聴いてみてほしい。サウンドはとてもオープン、大音量の音の部分でさえもその空気感が抜群です。感情の起伏、そして深さの表現は、あなたを包んで堪らない気持ちになるでしょう。
私は、ライブイヴェントにはなるべく接するようにしたほうがいいと思っている。そして録音のレビューもきちんと気にしたほうがいい。
私は、このライブと録音のレビューの2つのコンビネーションを参考にしながら、録音をやり続けています。
記者:
DSDの欠点は、編集できないこと。そこで、DSDの次なる改良プロセスとしては、DXDで編集できるようになることでしょうか?
サックス:
その通り。私がマーラー1番のRAWデータを君に送ることができたとしたら、その違いがわからなくなるでしょう。人々は私にオリジナル・マスターを要求してくることになる。
2012年でエキサイティングだったこと。私がネットコンテンツのDSDファイルを提供し始めたとき、DSD DACを提供できたメーカーは2社しかなかった。それがいまや60社を超える勢いなのです。
いま私はマルチチャンネルのDACを提供できるように働きかけている。Mytek, Oppo, and ExaSoundなんかがリーディング・カンパニー。我々の方向性は、マルチチャンネルの方向に向いていることは間違いないことです。
将来、私は、普通のCDを造ることに戻りたいと思っている。
私が、いま直面している問題点は、ハイブリッドのSACDを造るとき、それをノーマルのCDの値段で売ろうとしたときに、そのマージン利益が限りなく小さいものとなってしまうことなのです。それに比べて、ダウンロードコンテンツでは、2chステレオとマルチチャンネルのファイルをまったくその同じ値段で造れてしまいます。
アメリカの問題は、実際のところ、ディーラーであるところのレーベル。ここ数年、彼らはSACDを扱いたいと思っていないし、またそのための普及の教育をしたいと思っていないところに問題があると思っています。これはこれからもずっと抱える問題でしょう。
だから、私はリスナーを教育するための雑誌とWEBサイトを必要としています。
記者:
あなたの録音の中で、ポストプロダクションを通さないRAWデータが含まれることはありますか?
サックス:
あります。かなりの部分ある。最初の頃の録音、Ragazze String Quartet (Haydn, Schubert,Widmann)新しい録音では、レイチェル・ポッジャーの守護天使。とか。。。
記者:
聴くときの再生システムは、どのようなものをお使いですか?
サックス:
15年前、私はとてもアベレージだけど、とてもリニア特性に優れたオランダのオーディオメーカーの2Way SPを録音のために購入した。
私はスタッフを持たないといけなかったし、いつもリスニングルームでは、教会のような信じられないような響きをもったアコースティックな音響のサウンドを聴かないといけないので、とてもベーシックなモニターに適したシステムのほうがいいと思うようになりました。
私は、10台のSPを購入。うち5台はうちのスタジオに、そして残り5台を出張先のロケーション用とした。
私の他のスタジオでは、マルチチャンネル用のB&W 803Dを5本にクラッセの5つのアンプが内蔵されたパワーアンプ、そしてカスタムメイドのプリアンプ、そして van den Hul のケーブルを使っている。
大体、出張先のロケーションのところで、ほとんどすべての編集は終わってしまいます。
ステレオで編集するとき。そしてマスターを造る瞬間のマルチチャンネルで聴くときのみ。
大体、普通の一般ユーザーは、95%の人がステレオ2chで聴いていると思うので、自分にはそれがベスト。加えて、マルチチャンネルのプロセスはとてもシンプルだからね。
ときどき、ステレオ2chのために、私はサラウンド音声のアンビエンスをちょっとだけ加えることがある。そのようにしないと、2chではコンサートホールの空間が表現できないから。
ミックスダウンを終わった後、私は台所や私のオフィスや息子のラジカセのところに持っていきます。
特にボーカルの部分、Barbara Hannigan が歌うBritten's Les Illuminations。
私は、いわゆるハイフェッツ・エフェクトのようなヴァイオリンの響き効果、また別の場所でのピアノやオーケストラの響きの部分を造って足しこむようなことをする人間ではありません。
というのは、声というのは楽器の一部。特にディクション(発音)は明快に理解できるように聴き取れないといけない。だから、ここに特別の注意を払う。だから違う部屋に行って、その声を邪魔しないように、十分周りが低いレベルかどうか聴いてみるです。
私は、2chステレオミックスは、出張先ロケーションでも十分納得できるまで造りこむ。
しかし、もし必要ならばソロトラックや他のトラックをあとで追加することもある。
だから私のステレオミックスでは、私は常に加えている作業のみ。取り除くことは絶対しない。
でもときどき、出張先で、話し声さえ聴こえずらい悪いロケーションに遭遇するときもある。
そのようなときは、ソロトラックは別のトラックに格納して、後で処理する。
しかし、native DSDマスターのときは、編集できないので、DXDにて、ポストプロダクションによって処理する場合もある。
記者:
一般大衆が、DSD DACを購入して、あなたの192PCMファイルを持っていたとしたら、DSDファイルとは違う対価になるべきだと考えますか?
サックス:
はい。異なった解像度には、異なった対価を払うべきです。
120年の長いオーディオの歴史の中で、最初の時代、シンプルなダウンロードでどれも全く同じ解像度クオリティのファイルしか存在しない、という信じられない時代がありました。オランダの問題は、21%のtax。我々はダウンロードのために25ユーロ払わないといけない。我々は、クーポン・コードシステムを作って、購入ごとにポイントが溜まり、その25%のtaxを減算していくような工夫をしています。
我々は、音楽配信サービスのNative DSD Music.comをスタートさせました。
DSDでの音源の2chとマルチチャンネルのファイルを供給する音楽配信サイトです。
すべてのレーベルが、そのサイトには、自分のページ領域が割り当てられていて、録音をプロモートできます。
ファイル形式は、DSFファイル。メタデータは、JRiverとコンパティブルなソフトウエア上では、ファイルにタグづけされます。
我々は、64Fs DSDだけでなく、さらに128Fs DSD、256Fs DSDも対応させていくつもりです。
DXDファイル形式も、録音時にいっしょに付加されます。
1ヶ月単位でたくさんのレーベルの録音がどんどん追加されますので、ぜひご期待ください!
DSDは空気のような存在で、音楽の再生はまさにそうあるべきだ、というのがサックスの主張。
世間一般的には、PCMはロックやポップスのようなメリハリの効いたアタック感のある曲に向いていて、DSDは、繊細で柔らかい質感で空間を感じやすいような特徴があって、クラシックに向いている、というような通説がある。
サックスはその繊細な信号レベルを表現できるところが気に入っているようだ。
あと、最近、アーティストの新譜をSACDでは造らなくなって、物理メディアはCDで出して、あとはネットコンテンツ(DSDファイル)でavailableというビジネスのやり方も、結局コストの問題だったんですね。
サックス自身がノーマルなCDの原点に帰還したい、という考えを持っていたのは驚きました。
すべて伏線があったということです。
このインタビューで、Channel Classicsのすべてが理解できたと思う。
公式HPなんかより、その核心をついた内容だと思う。
これで、最後の砦であった、このレーベルの日記をかけてホッと安堵です。
もう思い残すことない。(あれ?CHANDOSは・・・?(笑))
ジャレット・サックスの強烈なインタビュー レーベル創立編 [オーディオ]
Channel Classicsに関する情報は、公式HPに通り一辺倒のことは書いてあるのだが、正直表面的で、自分にはイマイチ欲求不満であった。
スタジオの写真もネットで探してみたが、そのような類のものは一切見つからず、またディスクの中のクレジットも、録音スタッフは、JARED SACKSとあるだけで、創始者によるワンマンな会社で、結構クローズドで秘密主義のレーベルなんだな?とか思っていた。(笑)
これだけ魅力的なコンテンツを回転率よく新譜を回して、大変魅力的なレーベルで自分は大好きだったのであるが、どうもその素性がようわからん、という感じでミステリアスな感じだった。
その欲求不満を、このインタビューがすべて解決してくれた。
いままで謎に思っていたことをすべてジャレッド・サックス自身が、自分の口から喋ってくれた。
2014年にステレオファイルという雑誌媒体でインタビューを受けている。
https:/ /www.st ereophi le.com/ content /jared- sacks-d sd-pres ent-and -future
ここにすべてが書かれていると思う。
この2014年というのは、いわゆるハイレゾが話題に成り始めた頃で、”ハイレゾ=DSD信仰”みたいな乗りが業界全体にあって、SACDはフォーマット普及としてはイマイチだったけれど、DSDはネット配信で開眼する、みたいな勢いがあった。(いまはハイレゾ疲れというか、マーケット的に売れてなくて、すっかり披露困憊らしいですが・・・(笑))
その広告スターとしてジャレッド・サックスがノミネートされ、「DSDの現在と将来」というテーマでインタビューを受けた、という感じだ。
2014年当時も読んで、そのときもずいぶんと衝撃を受けたが、4年後に、まさか自分が、このレーベルのことで日記を書くとは露にも思っておらず(笑)、再度読み返してみたら、本当にショックというか、生々しい、というか、自分にはかなり衝撃だった。
いまのオーディオ事情からすると、インタビューの中身自体は、2014年当時の古さは感じるけど、貴重な証言だと思う。
サックスの喋っている理論を、本当に自分が理解して和訳している訳ではないので、訳の文に自然さがないところも多く、字ヅラだけ追っている感じのところもあるが、容赦ください。
力作です!
私はアメリカ人で、37年間オランダに住んできた。レーベル創立以来、妻と、2人半のスタッフだけで運営してきた少数精鋭の会社だった。
常に小さい規模をキープしてきた。すべてのことは私がやっている。妻はブックレットの作業を分担している。
録音が本当に好きで、他のレーベルのように録音はエンジニアに任せて、自分は録音に関わらない、という立ち位置も可能だったが、それは自分には合わないと思った。いまのレーベルはコピーされたものを受け取り、それを売るだけという会社が多い。
でも自分にはそれは耐えられなかった。自分は素晴らしいアーティスト達とレコーディングをすることがなによりも楽しかった。そのコピーを受け取り、単に売ることは、そのアーティスト達への罪だと考えた。
最初、私はホルン奏者だった。オブリン大学の2年生の夏のとき、スイスでオーケストラで演奏してくれないか、と頼まれた。
彼らからずっとこのオケに居続けてほしいと頼まれたとき、私はそうしたが、それが自分の人生の究極のゴールではないような気がした。
オブリンではラジオ局でディレクターをやっていた。そして同時にボストンのWCRVでインターンシップとして働いていた。自分もそのスタッフが好きだった。
スイスでコンセルトヘボウの第1ホルン奏者とギグをやったときに、アムスに一緒に勉強しに来ないかと誘われた。これはいいアイデアだと思った。スーツケースやホルンをそのまま残し、オランダ・アムスに行った。
彼のおかげで、自分の音楽大学での勉強は強制終了となった。私はいわゆるフリーランスの奏者となって、オーケストラでのホルン奏者となった。
私はKanaal Straatに家を買った。その家こそが、いまのChannel Classicsのオフィスになっている。1階は、アーティストの演奏するスタジオになっている。1900年初頭のRijks Museum のような塗装がされている。北側から陽が差し、ちょっとした高級な航海セーリングをしているような雰囲気だ。
私は室内楽が大好きだ。私のアンサンブルはすべてここでやっていた。
1982年か1983年ころ、月末の日曜日にコンサートを企画するようになった。
マイクロフォンを入手し、アナログで録音した。
コンセルトヘボウ設備会社は、古い椅子を売ってくれた。私はそれを50個くらい購入した。
私はバルコニーを造って、そこに人を招待することになった。
その当時は、私はまだ演奏していた。でもこれらの録音機材を所有していた。その頃になって、私は自分で演奏するより、こうやってプロデュースをやってコンサートをレコーディングすることのほうがずっと好きだと思うようになった。
1987年までに、私にデモテープを造ってくれ、という仕事の依頼が多く舞い込むようになった。特に歌手。
私の子供の頃、母親が毎週の土曜の朝にMilton CrossとMETでライブをやるので、子供のころからソプラノを聴き過ぎるくらいの経験があるので、今回も少々歌手に対して辟易な気分を抱くこともあった。
・・・ここから雑誌記者とのインタビュー形式。
記者:
ではSACDやDSDの話に行きましょう。あなたは、いわゆるSony/Philips系とは違う系列で、SACDレコーディングを始めた方の1人ですか?
サックス:
そうです。彼ら(Sony/Philips)は、設備投資に際し、ベータテストやプロモーションなど手助けが必要か聞いてきました。彼らは、私がソフトウエアの編集をやる隣の部屋にいたのです。
私はそこから40分離れたところに住んでいて、そこが同時に、唯一独立したSACDで録音するレーベルとなりました。
PENTATONEは、その後から参入してきました。ポリヒムニアのメンバーは、同様にそこによく手助けに来てくれました。でも唯一独立したレーベルだったのです。
私は、2001年に最初のハイブリッドのSACDを発売しました。Peter WispelweyによるRococo Variations。(イアン・フィッシャーの)ブタペスト祝祭管弦楽団とも何度かレコーディングのトライアルをしました。BOXのものでは、彼らが最初の商品でした。
商業的な意味で、公式のSACDとしては、Channel Classicsのものが最初なのです。ドイツでレコーディング・セッションをやっているとき、Philipsのスタッフは、ある一つの部屋で作業をやって、私は隣の部屋で作業をやるなどのパラレル録音もありました。
その頃は、まだすべてがソフトウエアの処理ではなかった。そしてまだオープンなPCボードでの処理でした。当時はコンピュータ処理するのに、4か月かかったりして、数分間間隔でクラッシュしていたりしていました。(笑)
いまはソフトウエアで処理することが当たり前で、すべてシンプルにできてしまいます。私はMerging Technologiesのソフトウエア、そしてDSDの処理はPhilipsのソフトウエアで作業をやっています。
15編集単位で、コンパイルするようになっていて、私は200編集ぐらいの規模が必要でした。
コンピュータでの処理はまだ完全にハンドルできる領域ではありませんでした。
彼ら(Philips)は、SACDフォーマットをプロモートするために、いろいろ送ってくれて、私の録音もそれに沿って行われたのです。
記者:
あなたはかつて、南米に行かれたこともありましたよね?私が正しければ・・・
サックス:
私はボリビアに行ってました。Bolivian Baroque のレコーディングとして。ボリビアの至る所に行って、SACDのプロモーションをやってきました。SACDはどういうところにメリットがあるのか?マルチチャンネルがあればベストだけど、そうじゃなくて2chステレオでもメリットあるんだよ、みたいな・・・。
記者:
いまはまさにアナログとダウンロード型のハイレゾ(特にDSDフォーマット)の時代が来ますかね?私にはわかりませんけど・・・
サックス:
イエス! レコーディング機材の観点から、本当に信じられない時代です。悪い機材や悪い録音をすること自体が難しいことになるくらい進化している。
でも私の問題は、常にミュージシャン・ファーストだということです。
良質の録音、再生を楽しむという観点で、それらを利用してエンジョイしているだけです。
しかも私はオーディオファイル(オーディオマニア)ではありません。
私にとって、オーディオファイル用のレコーディングというのは、ピアノ録音のときにも、音をキャプチャーできるように、マイクをピアノのハンマーの上方や横のほうに設置するようなことのことをやるレーベルのことを言います。
私はそのようなことにあまり興味がありません。ユーザの方には、倍音が聴こえて、それがどのようにミックスされたのかが聴こえないといけなく、そして聴取距離が必要。もちろんそこが”(ワインの)テイスティング”とみたいなもんなんですが。。。
私は、Channel Classicsがオーディオファイル御用達のレーベルだ、なんていうつもりはサラサラありません。私はただ、DSDテクノロジーを使えることがハッピーなだけ。なぜならそれらは、もはや音楽を聴く方法でしかないからです。
それを使うことで感情(情緒)の起伏を表現できて、それを聴くことが可能になります。
記者:
あなたがDSDに行った理由は、感情の起伏のため?
サックス:
そう!絶対に。
記者:
あなたは以前はPCMで録音していましたよね?
サックス:
そうですね。最初の時代、1990年から2001年あたりかな。でもDSDはスーパー。
いまはハイブリッドのSACDであり、そしてダウンロード経由でも。
DSDは以前聴いたことのある音よりも、ずっと大きな改善がある。
私はいまでも改良を重ねてきた。2010年に、オランダの会社、Grimm(Philips系です。)の新しいコンバーターを入手した。ファンタスティックだった。
私が以前使っていたdCSやMeitnerのものよりずっとステップアップしている、と思う。ユーザはなにが起きたんだ?と思っていると思うよ。
インタビューは長いので、2部に分けます。
スタジオの写真もネットで探してみたが、そのような類のものは一切見つからず、またディスクの中のクレジットも、録音スタッフは、JARED SACKSとあるだけで、創始者によるワンマンな会社で、結構クローズドで秘密主義のレーベルなんだな?とか思っていた。(笑)
これだけ魅力的なコンテンツを回転率よく新譜を回して、大変魅力的なレーベルで自分は大好きだったのであるが、どうもその素性がようわからん、という感じでミステリアスな感じだった。
その欲求不満を、このインタビューがすべて解決してくれた。
いままで謎に思っていたことをすべてジャレッド・サックス自身が、自分の口から喋ってくれた。
2014年にステレオファイルという雑誌媒体でインタビューを受けている。
https:/
ここにすべてが書かれていると思う。
この2014年というのは、いわゆるハイレゾが話題に成り始めた頃で、”ハイレゾ=DSD信仰”みたいな乗りが業界全体にあって、SACDはフォーマット普及としてはイマイチだったけれど、DSDはネット配信で開眼する、みたいな勢いがあった。(いまはハイレゾ疲れというか、マーケット的に売れてなくて、すっかり披露困憊らしいですが・・・(笑))
その広告スターとしてジャレッド・サックスがノミネートされ、「DSDの現在と将来」というテーマでインタビューを受けた、という感じだ。
2014年当時も読んで、そのときもずいぶんと衝撃を受けたが、4年後に、まさか自分が、このレーベルのことで日記を書くとは露にも思っておらず(笑)、再度読み返してみたら、本当にショックというか、生々しい、というか、自分にはかなり衝撃だった。
いまのオーディオ事情からすると、インタビューの中身自体は、2014年当時の古さは感じるけど、貴重な証言だと思う。
サックスの喋っている理論を、本当に自分が理解して和訳している訳ではないので、訳の文に自然さがないところも多く、字ヅラだけ追っている感じのところもあるが、容赦ください。
力作です!
私はアメリカ人で、37年間オランダに住んできた。レーベル創立以来、妻と、2人半のスタッフだけで運営してきた少数精鋭の会社だった。
常に小さい規模をキープしてきた。すべてのことは私がやっている。妻はブックレットの作業を分担している。
録音が本当に好きで、他のレーベルのように録音はエンジニアに任せて、自分は録音に関わらない、という立ち位置も可能だったが、それは自分には合わないと思った。いまのレーベルはコピーされたものを受け取り、それを売るだけという会社が多い。
でも自分にはそれは耐えられなかった。自分は素晴らしいアーティスト達とレコーディングをすることがなによりも楽しかった。そのコピーを受け取り、単に売ることは、そのアーティスト達への罪だと考えた。
最初、私はホルン奏者だった。オブリン大学の2年生の夏のとき、スイスでオーケストラで演奏してくれないか、と頼まれた。
彼らからずっとこのオケに居続けてほしいと頼まれたとき、私はそうしたが、それが自分の人生の究極のゴールではないような気がした。
オブリンではラジオ局でディレクターをやっていた。そして同時にボストンのWCRVでインターンシップとして働いていた。自分もそのスタッフが好きだった。
スイスでコンセルトヘボウの第1ホルン奏者とギグをやったときに、アムスに一緒に勉強しに来ないかと誘われた。これはいいアイデアだと思った。スーツケースやホルンをそのまま残し、オランダ・アムスに行った。
彼のおかげで、自分の音楽大学での勉強は強制終了となった。私はいわゆるフリーランスの奏者となって、オーケストラでのホルン奏者となった。
私はKanaal Straatに家を買った。その家こそが、いまのChannel Classicsのオフィスになっている。1階は、アーティストの演奏するスタジオになっている。1900年初頭のRijks Museum のような塗装がされている。北側から陽が差し、ちょっとした高級な航海セーリングをしているような雰囲気だ。
私は室内楽が大好きだ。私のアンサンブルはすべてここでやっていた。
1982年か1983年ころ、月末の日曜日にコンサートを企画するようになった。
マイクロフォンを入手し、アナログで録音した。
コンセルトヘボウ設備会社は、古い椅子を売ってくれた。私はそれを50個くらい購入した。
私はバルコニーを造って、そこに人を招待することになった。
その当時は、私はまだ演奏していた。でもこれらの録音機材を所有していた。その頃になって、私は自分で演奏するより、こうやってプロデュースをやってコンサートをレコーディングすることのほうがずっと好きだと思うようになった。
1987年までに、私にデモテープを造ってくれ、という仕事の依頼が多く舞い込むようになった。特に歌手。
私の子供の頃、母親が毎週の土曜の朝にMilton CrossとMETでライブをやるので、子供のころからソプラノを聴き過ぎるくらいの経験があるので、今回も少々歌手に対して辟易な気分を抱くこともあった。
・・・ここから雑誌記者とのインタビュー形式。
記者:
ではSACDやDSDの話に行きましょう。あなたは、いわゆるSony/Philips系とは違う系列で、SACDレコーディングを始めた方の1人ですか?
サックス:
そうです。彼ら(Sony/Philips)は、設備投資に際し、ベータテストやプロモーションなど手助けが必要か聞いてきました。彼らは、私がソフトウエアの編集をやる隣の部屋にいたのです。
私はそこから40分離れたところに住んでいて、そこが同時に、唯一独立したSACDで録音するレーベルとなりました。
PENTATONEは、その後から参入してきました。ポリヒムニアのメンバーは、同様にそこによく手助けに来てくれました。でも唯一独立したレーベルだったのです。
私は、2001年に最初のハイブリッドのSACDを発売しました。Peter WispelweyによるRococo Variations。(イアン・フィッシャーの)ブタペスト祝祭管弦楽団とも何度かレコーディングのトライアルをしました。BOXのものでは、彼らが最初の商品でした。
商業的な意味で、公式のSACDとしては、Channel Classicsのものが最初なのです。ドイツでレコーディング・セッションをやっているとき、Philipsのスタッフは、ある一つの部屋で作業をやって、私は隣の部屋で作業をやるなどのパラレル録音もありました。
その頃は、まだすべてがソフトウエアの処理ではなかった。そしてまだオープンなPCボードでの処理でした。当時はコンピュータ処理するのに、4か月かかったりして、数分間間隔でクラッシュしていたりしていました。(笑)
いまはソフトウエアで処理することが当たり前で、すべてシンプルにできてしまいます。私はMerging Technologiesのソフトウエア、そしてDSDの処理はPhilipsのソフトウエアで作業をやっています。
15編集単位で、コンパイルするようになっていて、私は200編集ぐらいの規模が必要でした。
コンピュータでの処理はまだ完全にハンドルできる領域ではありませんでした。
彼ら(Philips)は、SACDフォーマットをプロモートするために、いろいろ送ってくれて、私の録音もそれに沿って行われたのです。
記者:
あなたはかつて、南米に行かれたこともありましたよね?私が正しければ・・・
サックス:
私はボリビアに行ってました。Bolivian Baroque のレコーディングとして。ボリビアの至る所に行って、SACDのプロモーションをやってきました。SACDはどういうところにメリットがあるのか?マルチチャンネルがあればベストだけど、そうじゃなくて2chステレオでもメリットあるんだよ、みたいな・・・。
記者:
いまはまさにアナログとダウンロード型のハイレゾ(特にDSDフォーマット)の時代が来ますかね?私にはわかりませんけど・・・
サックス:
イエス! レコーディング機材の観点から、本当に信じられない時代です。悪い機材や悪い録音をすること自体が難しいことになるくらい進化している。
でも私の問題は、常にミュージシャン・ファーストだということです。
良質の録音、再生を楽しむという観点で、それらを利用してエンジョイしているだけです。
しかも私はオーディオファイル(オーディオマニア)ではありません。
私にとって、オーディオファイル用のレコーディングというのは、ピアノ録音のときにも、音をキャプチャーできるように、マイクをピアノのハンマーの上方や横のほうに設置するようなことのことをやるレーベルのことを言います。
私はそのようなことにあまり興味がありません。ユーザの方には、倍音が聴こえて、それがどのようにミックスされたのかが聴こえないといけなく、そして聴取距離が必要。もちろんそこが”(ワインの)テイスティング”とみたいなもんなんですが。。。
私は、Channel Classicsがオーディオファイル御用達のレーベルだ、なんていうつもりはサラサラありません。私はただ、DSDテクノロジーを使えることがハッピーなだけ。なぜならそれらは、もはや音楽を聴く方法でしかないからです。
それを使うことで感情(情緒)の起伏を表現できて、それを聴くことが可能になります。
記者:
あなたがDSDに行った理由は、感情の起伏のため?
サックス:
そう!絶対に。
記者:
あなたは以前はPCMで録音していましたよね?
サックス:
そうですね。最初の時代、1990年から2001年あたりかな。でもDSDはスーパー。
いまはハイブリッドのSACDであり、そしてダウンロード経由でも。
DSDは以前聴いたことのある音よりも、ずっと大きな改善がある。
私はいまでも改良を重ねてきた。2010年に、オランダの会社、Grimm(Philips系です。)の新しいコンバーターを入手した。ファンタスティックだった。
私が以前使っていたdCSやMeitnerのものよりずっとステップアップしている、と思う。ユーザはなにが起きたんだ?と思っていると思うよ。
インタビューは長いので、2部に分けます。