アラベラさんとルイージ [国内クラシックコンサート・レビュー]
デンマーク国立響、恐るべし!前評判通り凄かった。全国ツアーを組んでいて、東京公演は後ろのほうの日程だったので、先に体験したファンの方の投稿を拝読すると、みんな驚愕とともにスゴイ大絶賛。
嫌が上でも期待が高まる。同時にこんなに評価が高いと、肝心の東京公演のときに調子が出なかったりしたら嫌だなぁというつまらない心配をするほどであった。
自分はアラベラさんとファビオ・ルイージとの共演がお目当てでこの公演のチケットをとった。
デンマーク国立響は初来日。まったくその名を知らなかった。
デンマーク国立交響楽団(通称DR放送交響楽団(デンマーク語: DR SymfoniOrkestret))は、デンマークの首都コペンハーゲンに本拠を置く、デンマーク放送協会(DR)専属のオーケストラ。
本拠はDRコンサートホール。(ワインヤードです。)
首席指揮者としては過去にプロムシュテットが在籍していたこともあったようだが、2017年からファビオ・ルイージが就いている。
主なレコーディングは、様々な指揮者でCHANDOSレーベル(なんと!SACD高音質レーベルでお馴染みです。しばらくご無沙汰でした。)にあるほか、ブロムシュテット指揮でニールセン作品集やグリーグ「ペール・ギュント」、セーゲルスタム指揮でマーラー交響曲全集などがある。
ネット上にも情報が極めて少なく、とても未知のオーケストラであった。
フジテレビさん、東芝さん、よくこのような情報の少ない未知のオーケストラを見つけてきて招聘しようと思ったよなぁという感じで感心。
やっぱりルイージの影響は大きいでしょうね。
そこにアラベラさんをソリストとして迎えるアイデアはとてもグーです。
(Aプログラムは横山幸雄さん、Bプログラムはアラベラさん)
アラベラさんとルイージ、とても新鮮でフレッシュな顔合わせだと思ったし、お互い長いつきあいで、共演回数も多いとのこと。実際素晴らしいコンビネーションであった。
自分と同じで、みんなもデンマーク国立響のことはほとんど、いや全くと言っていいほど知らなかったはず。ところがいざ蓋を開けてみれば、その快演ぶりにびっくり仰天で驚愕してしまった、というのが偽らざるみんなの心境であろう。
とにかくオーケストラとしての発音能力がずば抜けて高いのだ。その凄い鳴りっぷりに圧倒されて、みんなコロッと行ってしまう感じ。近来これだけすごい鳴り方をするオーケストラは、ベルリンフィル以外自分の記憶にない。
弦楽器は極めて分厚いサウンドで、見事なまでのアンサンブルの精緻さ、弦楽器奏者全員の発音が寸分の乱れもなくピタッと揃っている。木管も嫋やかな音色でいて、これまたよく通る音。大音量のオケの中で見事にその音色を浮かび上がらせていた。金管も見事な安定した咆哮だし、打楽器も文句なし。
およそ欠点らしきものがその1回限りの公演ではあまり見つからなかった。
とにかくすごい鳴りっぷりのスケール感の大きなサウンドで、青天井のごとくどこまでも伸びていくぬけ感のあるサウンドでしかも恐るべく大音量。もうオーディオファンとしてはたまらん!という感じの気持ちのいいサウンドであった。
まさにスーパーオーケストラという感じか、というと、実際そうでもないんだな。(笑)
弦楽器奏者や木管など女性奏者が非常に大きなウエートをしめる楽団だと思うのだが、女性奏者の礼服がみんな個人でバラバラで統一感がないのが微笑ましい。(笑)また終演後、男女団員でお互いとても熱く抱擁しあって喜びを噛みしめ合うなど、とても素朴で暖かい人情味溢れる人柄が偲ばれる感じで、確かに凄い音を鳴らすけれど、およそ機能的なスーパーオーケストラのような都会的な擦れた感じでもなく、地方の田舎のオーケストラっぽい野武士軍団のようなワイルドな感じがするオーケストラという印象だった。
彼らが紡ぎ出すそのスゴイ音とのそういうギャップが可愛くてとても微笑ましいのだ。(笑)
最初オーボエ奏者のAによる調音なども、オーボエ奏者がぐるっと一周しながらやるなど、ちょっと自分はいままで見たことがないローカルっぽい慣習のような感じがした。
初来日で、まさに未知の領域であったこのオーケストラを初めて聴いて、みんな呆気にとられ、まさに驚愕という感じでショックに打ちのめされたというのが実情なところではないだろうか。
世界は、まだまだ広いなぁと感じたところだった。
嫌が上でも期待が高まる。同時にこんなに評価が高いと、肝心の東京公演のときに調子が出なかったりしたら嫌だなぁというつまらない心配をするほどであった。
自分はアラベラさんとファビオ・ルイージとの共演がお目当てでこの公演のチケットをとった。
デンマーク国立響は初来日。まったくその名を知らなかった。
デンマーク国立交響楽団(通称DR放送交響楽団(デンマーク語: DR SymfoniOrkestret))は、デンマークの首都コペンハーゲンに本拠を置く、デンマーク放送協会(DR)専属のオーケストラ。
本拠はDRコンサートホール。(ワインヤードです。)
首席指揮者としては過去にプロムシュテットが在籍していたこともあったようだが、2017年からファビオ・ルイージが就いている。
主なレコーディングは、様々な指揮者でCHANDOSレーベル(なんと!SACD高音質レーベルでお馴染みです。しばらくご無沙汰でした。)にあるほか、ブロムシュテット指揮でニールセン作品集やグリーグ「ペール・ギュント」、セーゲルスタム指揮でマーラー交響曲全集などがある。
ネット上にも情報が極めて少なく、とても未知のオーケストラであった。
フジテレビさん、東芝さん、よくこのような情報の少ない未知のオーケストラを見つけてきて招聘しようと思ったよなぁという感じで感心。
やっぱりルイージの影響は大きいでしょうね。
そこにアラベラさんをソリストとして迎えるアイデアはとてもグーです。
(Aプログラムは横山幸雄さん、Bプログラムはアラベラさん)
アラベラさんとルイージ、とても新鮮でフレッシュな顔合わせだと思ったし、お互い長いつきあいで、共演回数も多いとのこと。実際素晴らしいコンビネーションであった。
自分と同じで、みんなもデンマーク国立響のことはほとんど、いや全くと言っていいほど知らなかったはず。ところがいざ蓋を開けてみれば、その快演ぶりにびっくり仰天で驚愕してしまった、というのが偽らざるみんなの心境であろう。
とにかくオーケストラとしての発音能力がずば抜けて高いのだ。その凄い鳴りっぷりに圧倒されて、みんなコロッと行ってしまう感じ。近来これだけすごい鳴り方をするオーケストラは、ベルリンフィル以外自分の記憶にない。
弦楽器は極めて分厚いサウンドで、見事なまでのアンサンブルの精緻さ、弦楽器奏者全員の発音が寸分の乱れもなくピタッと揃っている。木管も嫋やかな音色でいて、これまたよく通る音。大音量のオケの中で見事にその音色を浮かび上がらせていた。金管も見事な安定した咆哮だし、打楽器も文句なし。
およそ欠点らしきものがその1回限りの公演ではあまり見つからなかった。
とにかくすごい鳴りっぷりのスケール感の大きなサウンドで、青天井のごとくどこまでも伸びていくぬけ感のあるサウンドでしかも恐るべく大音量。もうオーディオファンとしてはたまらん!という感じの気持ちのいいサウンドであった。
まさにスーパーオーケストラという感じか、というと、実際そうでもないんだな。(笑)
弦楽器奏者や木管など女性奏者が非常に大きなウエートをしめる楽団だと思うのだが、女性奏者の礼服がみんな個人でバラバラで統一感がないのが微笑ましい。(笑)また終演後、男女団員でお互いとても熱く抱擁しあって喜びを噛みしめ合うなど、とても素朴で暖かい人情味溢れる人柄が偲ばれる感じで、確かに凄い音を鳴らすけれど、およそ機能的なスーパーオーケストラのような都会的な擦れた感じでもなく、地方の田舎のオーケストラっぽい野武士軍団のようなワイルドな感じがするオーケストラという印象だった。
彼らが紡ぎ出すそのスゴイ音とのそういうギャップが可愛くてとても微笑ましいのだ。(笑)
最初オーボエ奏者のAによる調音なども、オーボエ奏者がぐるっと一周しながらやるなど、ちょっと自分はいままで見たことがないローカルっぽい慣習のような感じがした。
初来日で、まさに未知の領域であったこのオーケストラを初めて聴いて、みんな呆気にとられ、まさに驚愕という感じでショックに打ちのめされたというのが実情なところではないだろうか。
世界は、まだまだ広いなぁと感じたところだった。
今日は、いつものこの座席。皇族VIP席エリア。サントリーのこのエリアだから、オーケストラのサウンドも余計に素晴らしく感じたのかもしれない。
今日も収録をしているようで、先日のN響の茂木さんのラストラン・コンサートのときと全く同じマイク・セッティングがされていた。まったく同じ配置であった。おびただしいスポット・マイクの乱立。その従来とは違う独特の天吊りのメインの配置については、これが新しいサラウンドを録るときのマイキングなのだということを理解しました。(笑)
レセプショニストの方に確認したのだが、この収録はスウェーデンの放送のためにやっていることは確かなのですけど、日本での収録という訳ではなく、まだ未定です、ということでした。
一応フジテレビさんに後日確認して、もし放映があるようでしたらお知らせしますね。
これは絶対みんなに観てほしい演奏会です。
最初の曲は、ソレンセンによる現代音楽。
これはじつに極限とも言える最弱音の世界。コンサートミストレスをはじめ、ヴァイオリンの奏法でここまでの最弱音を奏でられるのか、という極限まで挑むようなじつに前衛的な世界だった。いままでに聴いたことがない極限の世界で見事としかいいようがなかった。世界初演。
終演後、作曲者がステージ上に上がり、拍手喝采を浴びていた。
2曲目はいよいよアラベラさんとのブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。
ブルッフのコンチェルトとしては、その後の2番と3番もあるのだが、なぜか世間一般で広く愛され、演奏されるのはこの1番だけだそうで、ブルッフ本人も残念に思っているという逸話もある。
ブルッフのコンチェルトは、アラベラさんとしては、いままで録音もしているし、演奏も何回もやってきているのだが、日本で演奏するのは初めて。日本初演とのこと。
ブラームスやチャイコフスキーのような技巧の難しさはないけれど、じつに美しい曲。
つねにアラベラさんの傍にあった曲ということでとても想い入れが深いそうだ。
このアラベラさんのブルッフのコンチェルト、じつに素晴らしかった。すごくいい!
自分の本懐を遂げた感じがした。
ドイツロマン派時代の哀愁漂うじつに美しい曲で、なんと官能的な曲なんだろうと思った。
アラベラさんは、華麗に、そして得意の弱音表現もじつに巧みに取り入れながら、曲の緩急にあわせ、見事にブルッフの曲想の根底にある流麗で哀愁漂う美しさのイメージを再現していた。
この曲には大河のごとくのように壮大でスケール感の大きい美しさの1面と、それでいながらなんともいえない哀愁漂うもの悲しさとが交差するような曲想の2面性を感じますね。それをオーケストラとアラベラさんの独奏の交互のやり取りで見事に具現化していたと思います。
このブルッフのコンチェルト、とても大好きになりました。
じつは、このアラベラさんのブルッフのコンチェルト、このSACDで予習をしていました。
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、
ショーソン:詩曲 シュタインバッハー、L.フォスター&グルベンキアン管
http:// qq3q.bi z/XxQS
いまのPENTATONEとは違って、昔のPENTATONEのジャケットは、このように対角線の片隅がベージュでした。ボクらのPENTATONEといえば、あきらかにこちらの時代でした。
いまのようなとても洗練された音作りで、音の粒子が細かい、いわゆる解像感が高くて、部屋中にふわっと広がる広い音場感、情報量の多い録音と違って、この当時のPENTATONEの録音は、どちらかというとマルチチャンネルの各SPからのダイレクト感が強い尖った感じのサウンドであった。
この録音当時のアラベラさんは、いまほど洗練されていなくて、まだブレークする前の時代であったが、そんな中でもこの録音は当時としては、ずば抜けて録音が良くて、自分の愛聴盤である。
今回のブルッフのコンチェルトのために久しぶりにラックから取り出してきて、聴いてみた。
やっぱり素晴らしい!
まさに、昨日のコンサートのときとまったく同じ感動が得られると思います。
アラベラさんのブルッフを聴くなら、このアルバム録音しかありません。
このアルバムには、じつはブルッフ以外にもコルンゴルドのコンチェルトも収められている。
コルンゴルドはヨーロッパ出身の音楽家である。
でも亡命し、アメリカを基盤に活動を続け、映画音楽を手掛けた。
映画音楽をさげすむ人もいる。
商業的な要素が強いし、純粋な芸術ではなく、エンターティンメントだという理由でだからだ。
でも実際、映画音楽の作曲は難しい。
だから一部の優れた作曲家にオファーが集中する。
短時間で作品をとらえ、曲をつけるのは簡単ではないのだ。
ヒラリー・ハーンがインタビューで答えていたセリフだ。
コルンゴルドの作風には、そういう独特の旋律というか魅かれるものがあるのは、そういう映画音楽という背景があるからかもしれない。このアラベラさんのコルンゴルドもじつに素晴らしいので、ぜひ聴いてほしいです。
後半は、ベートーヴェンの交響曲第7番。通称ベト7。
ルイージはN響の定期公演でもこの曲を取り上げていて、得意演目なのだろう。
とてもルイージらしいベト7だったように思う。
少なくともベト7のスタンダード、教科書のような演奏ではなかった。
ルイージの指揮の特徴としてテンポを揺らすに揺らす傾向があると思う。
今回も第2楽章、第3楽章のようにじつにゆったりとタメを作って、次なる爆発の瞬間に備えるかのような流れを作ったかと思えば、第4楽章のように、煽る、煽るという感じで、まさに疾走感のあるすごい快速テンポで突き抜けるようかのようなオケのドライブ術。
確かにそのような緩急をつけると、曲自体がドラマ性、激情型スタイルを持ち、すごいドラマティックに仕上がる。もう聴いていてとてもハイな気分なベト7のように感じた。
もちろんスピードの問題だけではない。強弱のつけかたもじつに柔軟だ。
それがオペラ指揮者であるルイージのドラマ性を重視する彼のひとつの指揮スタイルの一環なのだろう、と思う。教科書のような演奏ではないので、人によって好みは分かれるに違いない。
もうひとつのAプログラムのほうもメインは、チャイコフスキーの交響曲5番であった。
これもみんなは驚愕の大絶賛だった。
この曲もまさに、そのようなルイージによる独特のテンポのゆらぎを施していたに違いなく、チャイ5であれば、まさにそのようなことをすれば増々大盛り上がりする典型的な曲だ。
なんか大絶賛もわかるような感じがする。
私は、そのようなルイージによる指揮スタイルが大好きだ。
激情型スタイルでドライブ感があって切れ味が抜群。
自分にとって、ルイージといえば、小澤征爾さんに学んでサイトウキネン松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)を振っていた頃にたくさん彼の指揮を聴いたことがある。オペラ、オーケストラコンサートを両方ルイージの指揮で聴いたことがある。
だから自分にとってルイージと言えばサイトウキネンなのだ。
そんなルイージが、4年振りに今年の松本の夏に復帰する。
久し振りにルイージを聴いて、ますます彼の指揮者としての素晴らしさを認識できた。
数年前までは、コンサートと言えば行きまくって時代があったが、昨今では予算不足のため、自分が行きたいと思うコンサートに絞っている。今年の残りに行く予定のコンサートを考えてみると、今回のデンマーク国立響の公演が、今年のNo.1だったということになりそうな気配だ。
まったく予想だにしていなかったダークホースの健闘で、本当に驚いた公演だった。
今日も収録をしているようで、先日のN響の茂木さんのラストラン・コンサートのときと全く同じマイク・セッティングがされていた。まったく同じ配置であった。おびただしいスポット・マイクの乱立。その従来とは違う独特の天吊りのメインの配置については、これが新しいサラウンドを録るときのマイキングなのだということを理解しました。(笑)
レセプショニストの方に確認したのだが、この収録はスウェーデンの放送のためにやっていることは確かなのですけど、日本での収録という訳ではなく、まだ未定です、ということでした。
一応フジテレビさんに後日確認して、もし放映があるようでしたらお知らせしますね。
これは絶対みんなに観てほしい演奏会です。
最初の曲は、ソレンセンによる現代音楽。
これはじつに極限とも言える最弱音の世界。コンサートミストレスをはじめ、ヴァイオリンの奏法でここまでの最弱音を奏でられるのか、という極限まで挑むようなじつに前衛的な世界だった。いままでに聴いたことがない極限の世界で見事としかいいようがなかった。世界初演。
終演後、作曲者がステージ上に上がり、拍手喝采を浴びていた。
2曲目はいよいよアラベラさんとのブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。
ブルッフのコンチェルトとしては、その後の2番と3番もあるのだが、なぜか世間一般で広く愛され、演奏されるのはこの1番だけだそうで、ブルッフ本人も残念に思っているという逸話もある。
ブルッフのコンチェルトは、アラベラさんとしては、いままで録音もしているし、演奏も何回もやってきているのだが、日本で演奏するのは初めて。日本初演とのこと。
ブラームスやチャイコフスキーのような技巧の難しさはないけれど、じつに美しい曲。
つねにアラベラさんの傍にあった曲ということでとても想い入れが深いそうだ。
このアラベラさんのブルッフのコンチェルト、じつに素晴らしかった。すごくいい!
自分の本懐を遂げた感じがした。
ドイツロマン派時代の哀愁漂うじつに美しい曲で、なんと官能的な曲なんだろうと思った。
アラベラさんは、華麗に、そして得意の弱音表現もじつに巧みに取り入れながら、曲の緩急にあわせ、見事にブルッフの曲想の根底にある流麗で哀愁漂う美しさのイメージを再現していた。
この曲には大河のごとくのように壮大でスケール感の大きい美しさの1面と、それでいながらなんともいえない哀愁漂うもの悲しさとが交差するような曲想の2面性を感じますね。それをオーケストラとアラベラさんの独奏の交互のやり取りで見事に具現化していたと思います。
このブルッフのコンチェルト、とても大好きになりました。
じつは、このアラベラさんのブルッフのコンチェルト、このSACDで予習をしていました。
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、
ショーソン:詩曲 シュタインバッハー、L.フォスター&グルベンキアン管
http://
いまのPENTATONEとは違って、昔のPENTATONEのジャケットは、このように対角線の片隅がベージュでした。ボクらのPENTATONEといえば、あきらかにこちらの時代でした。
いまのようなとても洗練された音作りで、音の粒子が細かい、いわゆる解像感が高くて、部屋中にふわっと広がる広い音場感、情報量の多い録音と違って、この当時のPENTATONEの録音は、どちらかというとマルチチャンネルの各SPからのダイレクト感が強い尖った感じのサウンドであった。
この録音当時のアラベラさんは、いまほど洗練されていなくて、まだブレークする前の時代であったが、そんな中でもこの録音は当時としては、ずば抜けて録音が良くて、自分の愛聴盤である。
今回のブルッフのコンチェルトのために久しぶりにラックから取り出してきて、聴いてみた。
やっぱり素晴らしい!
まさに、昨日のコンサートのときとまったく同じ感動が得られると思います。
アラベラさんのブルッフを聴くなら、このアルバム録音しかありません。
このアルバムには、じつはブルッフ以外にもコルンゴルドのコンチェルトも収められている。
コルンゴルドはヨーロッパ出身の音楽家である。
でも亡命し、アメリカを基盤に活動を続け、映画音楽を手掛けた。
映画音楽をさげすむ人もいる。
商業的な要素が強いし、純粋な芸術ではなく、エンターティンメントだという理由でだからだ。
でも実際、映画音楽の作曲は難しい。
だから一部の優れた作曲家にオファーが集中する。
短時間で作品をとらえ、曲をつけるのは簡単ではないのだ。
ヒラリー・ハーンがインタビューで答えていたセリフだ。
コルンゴルドの作風には、そういう独特の旋律というか魅かれるものがあるのは、そういう映画音楽という背景があるからかもしれない。このアラベラさんのコルンゴルドもじつに素晴らしいので、ぜひ聴いてほしいです。
後半は、ベートーヴェンの交響曲第7番。通称ベト7。
ルイージはN響の定期公演でもこの曲を取り上げていて、得意演目なのだろう。
とてもルイージらしいベト7だったように思う。
少なくともベト7のスタンダード、教科書のような演奏ではなかった。
ルイージの指揮の特徴としてテンポを揺らすに揺らす傾向があると思う。
今回も第2楽章、第3楽章のようにじつにゆったりとタメを作って、次なる爆発の瞬間に備えるかのような流れを作ったかと思えば、第4楽章のように、煽る、煽るという感じで、まさに疾走感のあるすごい快速テンポで突き抜けるようかのようなオケのドライブ術。
確かにそのような緩急をつけると、曲自体がドラマ性、激情型スタイルを持ち、すごいドラマティックに仕上がる。もう聴いていてとてもハイな気分なベト7のように感じた。
もちろんスピードの問題だけではない。強弱のつけかたもじつに柔軟だ。
それがオペラ指揮者であるルイージのドラマ性を重視する彼のひとつの指揮スタイルの一環なのだろう、と思う。教科書のような演奏ではないので、人によって好みは分かれるに違いない。
もうひとつのAプログラムのほうもメインは、チャイコフスキーの交響曲5番であった。
これもみんなは驚愕の大絶賛だった。
この曲もまさに、そのようなルイージによる独特のテンポのゆらぎを施していたに違いなく、チャイ5であれば、まさにそのようなことをすれば増々大盛り上がりする典型的な曲だ。
なんか大絶賛もわかるような感じがする。
私は、そのようなルイージによる指揮スタイルが大好きだ。
激情型スタイルでドライブ感があって切れ味が抜群。
自分にとって、ルイージといえば、小澤征爾さんに学んでサイトウキネン松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)を振っていた頃にたくさん彼の指揮を聴いたことがある。オペラ、オーケストラコンサートを両方ルイージの指揮で聴いたことがある。
だから自分にとってルイージと言えばサイトウキネンなのだ。
そんなルイージが、4年振りに今年の松本の夏に復帰する。
久し振りにルイージを聴いて、ますます彼の指揮者としての素晴らしさを認識できた。
数年前までは、コンサートと言えば行きまくって時代があったが、昨今では予算不足のため、自分が行きたいと思うコンサートに絞っている。今年の残りに行く予定のコンサートを考えてみると、今回のデンマーク国立響の公演が、今年のNo.1だったということになりそうな気配だ。
まったく予想だにしていなかったダークホースの健闘で、本当に驚いた公演だった。
(C)アラベラさんFB (Rikimaru Hotta)
東芝グランドコンサート2019
ファビオ・ルイージ指揮デンマーク国立交響楽団
2019年3月19日(火)サントリーホール 19:00~
指揮:ファビオ・ルイージ
ヴァイオリン:アラベラ・美歩・シュタインバッハー
デンマーク国立交響楽団
ソレンセン:Evening Land〈日本初演〉
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 Op.26
ヴァイオリン・アンコール~
クライスラー:レチタティーヴォトスケルツォ・カプリスOp.6
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 Op.92
アンコール~
ゲーゼ:タンゴ・ジェラシー